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2015年9月

2015年9月10日 (木)

掛け軸の奥行(表具の力)

今まで見逃していたすごい力を目撃しました。

「表具師」という職人の力です。
1889年、東京美術学校が開校された当初からあった科は「日本画」「木彫」「彫金」でした。1899年に「西洋画」「図案」が、1899年に塑造科が出来ました。
「彫金」というと今はジュエリーや表面の金属装飾という印象ですが、明治の彫金師は装剣金工の仕上げまでを仕切るアートディレクターでもありました。
仕上げて施主に渡すということは、刀剣の由緒や形はもちろん、持ち主の嗜好やそれを置く場所、全てを考えて意匠を施す必要があったからです。
そんな伝統的な形でアートディレクションを続けているのが表具師さんだったと、ある職人さんの仕事を拝見して気が付きました。
本物の和紙を知るようになってから、折々に伝統的な仕事を続けている方達に会えるようになりました。其々に技術がつながっているからです。
日本の湿気にも伸びにくい掛け軸の裏打ち用の和紙を昔通りに表装出来る職人さんは少なくなったそうです。
今の私達が美術作品を作る場合、制作の最初から展示までを自分の作品として責任持ちたいと思いますが、それとは少し違うのが表具の世界です。
掛け軸や表具、襖絵など伝統的な日本の絵画は持ち主やその場所(茶室等)によって何度も作り直される事を前提とされてきました。
書家の書いた作品は持ち主の好みや場所に合わせて表装されます。
場所に合わせて、真、行、草とある程度の決まりはありますが、素材や色柄は限りなく、屏風に散らした和歌などの配置は表具師の腕にかかっています。



その日拝見した数点は全て一人の表具師さんの仕事でした。
藍に染められた紙に金泥の般若心経の格式のある表装。まったく捩じれなくしっとりと落ちて、ずばり真の真の掛け軸でした。
「野点」という名の作品は野の草と和歌が描かれた切が散らされた二曲屏風。変形風炉先。散らしのバランスを見て唸りたい気持ちになりました。ちいさな其々は天日干し和紙なので色が微妙に違い、絵柄も、歌の文字バランスも皆違います。それを優しい野点という題名にぴったりに散らしてありました。そしてほっそりした枠の朱色。国産漆のしっとりとした色味。
もう一種の作品は見たこともない表装の仕方。これは書家の作品自体も粋で斬新な歌合せだったので、実験されたとのこと。その二福は経文を綴じるような組紐で綴じられて、現代作家の作品のようで、その素材と色とバランスに唸りました。私が欧米人だったら「Cool!」と両手を広げたと思います。(は無いか)
何代も表具を作られてきたその職人さんは、まだお若いようにというよりお年よりお若く見えました。東京から奈良まで展示のためにお弟子さんといらしていて、言葉少なく仕事をして帰られました。茶室でも展覧会会場でも同じように責任を持って展示までするのが「仕上げる」という事。そして搬出もいらっしゃったのを見て、日本の文化は凄いと思いました。美しい作品の後ろにある美。



掛け軸は小さくしまうことが出来、持ち運びも軽く、厚みも少ないものですが、そのものの持っている奥行きは物凄いと感じ入りました。

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