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2008年12月19日 (金)

異形の花

最初に彼女に会ったのは、駅ビルのパン屋だった。

入り口にパンが並び、右手奥に買ったパンと飲み物を持って座れる喫茶室のある、小さなパン屋は昼下がりのお茶の客でいっぱいだった。

年の頃は22~3歳、スマートできちんと化粧をし、リクルート系ファッションのその女性は、店の真ん中にあるフランスパン売り場で右手のひじを軽く曲げ、どれにしようか迷っている風情で味見用パンをつまんでいた。

私は店で一番人気というクリームパンがトレイに残り一つだったので、それを自分のトレイに乗せたが、トングでつまむと「クリームパン」と書いてある紙のラベルにくっついていたので、少し残念な気持ちになった。

でも、それを元のトレイに戻すのも気が引けて、まあいいやと気持ちに決着をつけたりと、パンひとつにくよくよしている本日も相変わらずの私だった。

ふとフランスパンに目を移すと、そこにはさっきの女性がまだ味見カゴの前でぱくついていた。

人に押されて移動しながら、隣の味見カゴへ移ってはひとつ、またひとつと小指を立てて味見を繰り返していた。

味見を通り越して、明らかな食事だった。

「おお、若いのに大胆だのう!」  

小心者の私はそのとき彼女に好意は持てなかった。

二回目に彼女を見たのは、その10分後位だった。

私はいつも自転車で帰る道を歩いていた。

後ろのほうから、かっかっかっか、とリズミカルな足音が近づいてきて、まもなく私を追い越して行く女性がいた。

年のころなら22~3歳、スマートでリクルート系ファッションの女性がまっすぐ前を見て姿勢良く歩いていた。

ふと、さっきのパン屋味見ちゃんだと気が付いた。

何気なく観察するのが習性の生き物私は、自分の子供には「ドント ステイア」なんちってるくせに、たまたまその道には私達2人だったのを良いことに、追い抜く彼女の後ろ姿を見てしまいました。すみません。息子よ。

リクルートスーツの上に羽織ったきちんとした感あるコートは、カジュアルにも着られるカーキ色で、これはオンオフどちらにも使える便利もの。

足音が大きかったのは、ちょっと大き目のパンプスのせいだった。

スマートだと思ったがちょっとスマートを通り越しているかもしれない痩せ加減の足には、何枚もストッキングを重ねて履いていて、そのおかげで何本もの伝線しているところがぼやけていた。   なんというグッドアイデア!

もしかして、最近痩せてきたから靴が大きくなっちゃったのかな。

妄想癖の私は、就職活動中で、生活を切り詰めているらしいこの女性の性格を考え始め、そのうちに彼女の事をちょっと尊敬し始めていた。

彼女の歩調は全く変わらず、そう遅く歩くわけでもない私を残してぐんぐん遠ざかって行き、そうこうしてるうちに自宅に曲がる角へ来た私は、小さく彼女に手を振ってエールを送ってしまった。

彼女はそんなことなど気が付くはずもなく、次の駅も超えていく勢いでかっかっかっかと歩いていったのだった。

おしまい。   

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コメント

くよくよするのはいけない、と考えるとつまらなくなるので、そう、自然体でくよくよしていればいいと思います。
私だってくよくよしますとも。
ささいなことでくよくよします。
その一例を「50円玉でくよくよする」という題で、私のブログに書きましたよ。

コメントありがとうございます。
go2さんもくよくよすることありますか?
go2さんの光と時間を取り込んだ作品は流木の繊維にそって少しくねくねしてますが、無駄のない美しい形ですね。
あそっか、自然体でくよくよしてればいいのか?

くよくよする人生はたのしいですね。

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