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2008年8月25日 (月)

金沢21世紀と18世紀

夜中に車飛ばして金沢に行った。

お目当ては21世紀美術館のロン・ミュエク展と特別公開の成巽閣・国指定名勝「飛鶴庭」、茶室「清香軒」、「清香書院」。

朝一番に見学に行ったのは、前田家13代当主が母堂(12代奥方)に建てたという、巽御殿と呼ばれていた成巽閣。

なんとか御殿ってよくお店にあるけど、やはり本物は違う。(って感心の仕方が違う)

御殿に入るまでの道のりからして違う。

そもそもあの兼六園がそこん家のお庭だ。

明け方の雨が止んだ後の、兼六園とその中にある成巽閣入り口は、木々の緑全体が水分を含んでいて、息を吸うと肺の中まで透明な緑の空気が流れ込んできた。

一センチで百年分の土だから、一万年分ほどの栄養を吸って何百年生きてきた大きな木々の葉一枚一枚や、丹精こめて地面に這わせた苔の、一本一本が庭に静かに息づいていた。

こんな風に書いてたら、らちあかないんですけど。

なぜこんなディティールばかりかと言うと、今日のテーマがそれだから、なんす。

建物全体は大きいけれど、もっと大きな兼六園の中に溶け込んでいて、屋根も柿葺でそう派手に見えない、いたってシンプルな印象だ。

しかし建物の中は時間のたっぷりある母親が毎日それらを愛でて暮らせるように細部はめちゃくちゃ手が込んだ作りになっている。

13代当主が母親の為に作った家は、一言で言って「愛らしい」。

腰板に描かれた魚や花がとても春らしい上に、一枚ごとに花の数が増えていって、障子を立てる順番がわかるように工夫されていたり、障子にはめ込まれたギヤマン(ガラス)に小さな鳥が描かれていたりと、一見気づかないところにかわいらしさ満載。

今回、拝見できた茶室「清香軒」と「清香書院」は、建物の北側に位置するプライベートな数奇屋の空間。

謁見の間や、柱の無い広々した縁側にある、フォーマルな大きさが全く無い。

天井も低く、板の目も細かく、打ち上げの竹や棒は交互に違うものを使っている。

戸棚の小さな取っ手が、可愛らしい桐の意匠だったり、絹の房が付いているように見えるのは金属の打ち出しで出来ていたり、木の枝に見えるのは黒珊瑚で、その枝に沿うように土壁がそっと複曲面に整えられていたり、いちいちが手の込んだ小さな宇宙。

所縁ある異素材満載、小さくて大きな世界が茶室の醍醐味ではあるけれど、本当にそこは細身で優しく愛らしい細部の集合だった。

細部が凝っていても、加賀の文化と工芸にたっぷり財力を使ったセンス良い前田家が作ったものだから、全体としてまとまっている。

こりゃお母さん喜んだろうなあ。

今回特に印象に残ったのは、茶室の床の間が畳とツラ位置の平らな原叟床に、竹の床柱が立っている様子。

薄暗い(といっても比較的障子が大きくとられているから明るめだが)部屋の、濃い目に磨かれた床板に、明るい色めの竹の床柱が、広い水面にすっと立っているようでとってもきれいだった。(その床柱も下は丸で上に行くにしたがって角竹になる、目立たない懲りよう)

そこに茶室脇の土間が大きく広がり、直接柱が立っていて庇がかかっている土庇(どびさし)は、床の間と相似形で響き合っていた。

その日は戸が立っていなかったので、広い土間は屋外に感じられたが、雪の日などは周りに戸が立ち、川が流れている土間は屋内になる。屋外との境界を2つの方法で仕切るため、そこにある空間は家の中なのか外なのか、どっちでもあるんだった。

お庭は、手水の石にお地蔵様がにっこり彫られていて、奥に座れば、小さく仕立てられた木と周りの大きな木が窓枠にまとまり、庭先に顔をだせば、後ろに兼六園のすんごい木々が母さん守ってるよー、って感じで大きくまとまる。

小さな茶室から外の世界まで入れ子(土庇のおかげで逆入れ子にもなっている)の複雑で楽しめる空間。

そんな複雑で繊細な企みがある書院だが、そこに入っていると、格式というより居心地良く隠居のお母さんが暮らした様子が感じられた。

なんちゃって、素人の妄想でした。

そんなこんなで、18世紀の細部を腹いっぱい堪能して、次に行ったのが金沢21世紀美術館のロン・ミュエク展

作品の実物を見ることが、今回一番の楽しみ。

あらまあ。

こちらも「めくるめくディティール」だった。

・・・・・・・・・・・。

今日の感想。

よく肝に銘じよう。

「神は細部に宿る」って言葉。

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